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医学中央雑誌の現況とこれから

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医学中央雑誌の現況

現在、「医学中央雑誌」の姿はインターネットサービス「医中誌Web」です。この医中誌Webを「データ」「サービス」「検索システム」の各視点からご紹介します。

データでみる医中誌Web

2023年3月現在、「医中誌Web」には約1,500万件の文献情報が収録されています。
これらのデータをさまざまな角度から見てみます。

■ 収録文献数と「3種類の情報」

データ作成年ごとの収録文献数はグラフ1の通りです。

また、Webに収録されている情報は、大きく3種類に分けられます。3種類のデータにおいては、データ項目などが若干異なります。

  • 通常データ(1996年分~):医学中央雑誌刊行会の社内システム(JAMASシステム)にて作成したもの
  • 通常データ(1983年~1995年分):大日本印刷(株)にて電子組版を行った際のデータを医中誌データベースに引き上げたもの
  • OLD医中誌データ(~1983年分):冊子体(活版印刷による印刷物)の情報をデータ化したもの
【グラフ1】データ作成年ごとの収録文献数
■ 論文種類(記事区分)

医中誌Webで収録する論文の種類は、年代によってその割合の傾向が変わりますが、近年は6割強が会議録(学会抄録)、約1~2割が原著論文、約2割が解説記事です。
グラフ2は過去5年間のデータの内訳です。

【グラフ2】過去5年間の論文種類(記事区分)の内訳
■ 発行元の種別

医中誌Webに収録されている情報の発行元の種別による内訳はグラフ3の通りです。学会・研究会が発行する雑誌が半数以上を占めています。

【グラフ3】発行元の種別による内訳
■ フルテキストリンク件数およびリンク先サイト

2006年にリリースした医中誌Web Ver.4から、原本である電子ジャーナルへのリンク(フルテキストリンク)を開始しました。リンク数およびリンク先サイトの推移はグラフ4の通りです。
なお、このグラフでは、同一論文が複数のサイトから提供されている場合、それぞれ別々に集計しています。重複を除去したフルテキストへのリンク件数は約440万件となります。

【グラフ4】リンク数およびリンク先サイトの推移
■ 電子ジャーナルでのみ提供されている雑誌の受け入れ

冊子の発行が終了となり、電子ジャーナルのみで提供されている雑誌が年々増加しています。このような雑誌については、PDFをお送り頂いたり、または電子ジャーナルを直接参照したりしてデータ作成を行っております。
グラフ5は、その受け入れ雑誌数の推移です。

※ 冊子の発行も継続している電子ジャーナルは含みません。(含めると現在1,700誌程度あります。)

※ 受け入れ雑誌数は、その年に入手した雑誌の数です。現時点で収録対象の雑誌自体は約4,000誌あります。

※ 電子での受け入れはPDFなどにより入手している雑誌の数です。各論文のメタデータをXMLなどの電子データにより直接入手している雑誌は、これとは別に100誌程度あります。

【グラフ5】電子ジャーナルでのみ提供されている雑誌の受け入れ数の推移
■ 抄録、著者抄録

原著論文を中心に全体の約2割に抄録を付与しています(グラフ6)。
なお、2004年より、許諾を得られた雑誌については著者抄録を採用しています。抄録における著者抄録の割合は年々増加し、現在は6割を超えています(グラフ7)。

【グラフ6】抄録付与数の推移
【グラフ7】抄録に占める著者抄録の割合の推移
■ キーワード付与数

1文献あたりに付与されるキーワード(シソーラス用語・医中誌フリーキーワード)の個数はグラフ8の通りです。原著論文はよりきめの細かい索引を行うため、他の論文種類の文献と比較してより多くのキーワードが付与されています。
医学用語シソーラスは米国国立医学図書館(NLM)のMeSHに準拠しています。1983年に初版を発行し、それ以降改訂を続けています。

【グラフ8】1文献あたりに付与されるキーワード数の推移
■ シソーラス用語数

表1は各版の統制語数および準拠しているMeSHです。
グラフ9は、医学用語シソーラスおよび医中誌フリーキーワードの統制語数の推移です。

発行年統制語数準拠とした
MeSHの版
第1版1983年13,4851978年版
第2版1987年17,8821984年版
第2版改訂版1990年17,9261984年版
第3版1994年14,4541991年版
第4版1999年18,1561997年版
第5版2003年21,3782001年版
第6版2007年25,3172005年版
第7版2011年28,2052010年版
第8版2015年29,8622014年版
第9版2019年31,7612018年版
第10版2023年33,1652022年版
【表1】各版の統制語数および準拠としたMeSH
【グラフ9】医学用語シソーラスおよび医中誌フリーキーワードの統制語数の推移
■ 研究デザインタグ

2003年より研究デザインタグの付与を開始しました。その後、2002年以前の文献についても遡及してメンテナンスを行っており、2023年3月現在でタグ付けされたレコード数は表2の通りです。

メタアナリシスランダム化
比較試験
準ランダム化
比較試験
比較研究診療
ガイドライン
1983年20530
1984年28744
1985年37263
1986年30851
1987年28292
1988年34561
1989年37760
1990年33766
1991年611105
1992年44778
1993年53791
1994年50694
1995年55672
1996年48081
1997年45967
1998年36453
1999年5294328
2000年52994120
2001年123756231
2002年183696471
2003年315191038,617102
2004年375511108,19473
2005年194821388,380134
2006年4773019610,948122
2007年4775216710,23699
2008年5196515111,535142
2009年517881249,347119
2010年8492115510,755114
2011年718991389,666112
2012年888961509,867112
2013年10691016110,284135
2014年14298715011,124178
2015年2081,16515611,458159
2016年1681,24216310,155136
2017年1601,1281319,957169
2018年2201,0741199,566141
2019年2021,0141008,861180
2020年3061,1787810,122212
2021年309947958,768233
2022年279788747,842149
2023年85165231,82135
総計2,75125,9113,989197,5032,986
【表2】研究デザインタグの付与数の推移

サービスでみる医中誌Web

Web版のリリースに伴い、利用者の裾野は益々広がり、現在大変多くの方にご利用頂いています。
利用状況やユーザー設定カスタマイズ、ご契約状況から医中誌Webの現状を見てみます。

■ 利用状況

平日だと一日平均約22,000人、週末だと約11,000人の方にご利用頂いています。
グラフ10はログイン人数の推移です。2021年、2022年の週末・休日の利用の増加はコロナ禍における"巣ごもり"の影響と思われます。

【グラフ10】1日あたりのログイン人数の推移
■ フルテキストリンクのクリック

1回の検索あたりの、フルテキストリンク(電子ジャーナルへのリンク)がクリックされる回数は年々増加しています。これは利用の増加の他に、雑誌の電子化が進んで全体のリンク件数が増加していることも関連します。検索後に目的の文献に辿り着けているかを示す数字でもあります。
グラフ11は年ごとの推移です。

【グラフ11】検索1回あたりの電子ジャーナルへのリンクがクリックされる回数の推移
■ デバイス別アクセス

デバイス別のアクセスの割合はグラフ12の通りです。
スマートフォンによる利用は、2019年のスマートフォン版インターフェース提供開始以降増加しましたが、その後2割程度で推移しています。

【グラフ12】デバイス別のアクセスの割合の推移
■ OS別アクセス

OS別アクセス状況はグラフ13の通りです。

【グラフ13】OS別のアクセスの割合の推移
■ 契約数

契約数の推移はグラフ14の通りです。2000年のWeb版提供開始前は、冊子版とCD-ROM版を合わせて1,000~1,500程度で推移していましたが、Web版の提供以降およそ2倍に増加しています。

【グラフ14】契約数の推移
■ 「ユーザー管理」機能利用状況

フルテキストリンク同様に医中誌Web Ver.4以降、ご機関様ごとに検索条件・画面表示のカスタマイズや機関システムとの連携などが可能となりました。グラフ15は、何らかのカスタマイズを行っているご機関様およびOPAC/リンクリゾルバへのリンク設定を行っているご機関様の数の推移です。

【グラフ15】「ユーザー管理」機能の利用状況の推移
■ 契約機関の種別

グラフ16は契約の機関種別の内訳です。大学・教育機関と病院で全体の85%以上を占めています。なお、最近では様々な企業・研究機関・公共図書館などでも広くご利用頂いています。

※現在、全国で約30件の公共図書館にご利用頂いています(国立国会図書館含む)。

【グラフ16】契約機関の種別の内訳

検索システムでみる医中誌Web

ここでは医中誌Webのシステム構成等について紹介します。

■ システム構成

医中誌Webのメインのシステムは、外部のデータセンターにハウジングしてオンプレミスで構築しており、安全に管理されています。更に一部のシステムはクラウド化し、負荷・リスク分散や処理の効率化なども進めています。
図1はシステム構成を簡単にまとめた概要です。医中誌Webにアクセスした際にブラウザ上に表示されるページは、「②ユーザーインターフェース・各種連携システム」です。このシステムはネットワーク内の各システムと連携し、利用者の情報を管理・反映したり、検索結果を表示したりします。なお、医中誌Webのデータや契約情報の管理等は当会オフィス内で行っております。(図中の⑧および⑨)。検索データについては、内部の専用システムで作成・編集を行っており、完成したデータは月に2回アウトプットして医中誌Webに更新されます。

【図1】システム構成の概要
■ 検索データベース

医中誌Webシステムの核となる検索データベースには、ホロン(株)が開発するHiBaseを採用しています。HiBaseは、同社による完全オリジナルのデータベースシステムです。データベースのコアな部分までカスタマイズすることが可能で、医中誌Webのデータ構造やシステム構成に合わせて最適化しています。

■ システム開発について

それぞれシステムはAPIで疎結合しているため、システムごとの管理・運用が行いやすく、保守・開発を担当する開発業者もシステムごとに分かれています。システム全体を最適化して適切なコストで運用していくことが前提ではありますが、常にサービスの利便性向上に軸足を置き、限られた人員・予算で、実装すべき機能をできる限り効率的に実装していくという理念、目標のもと開発業者の協力を得ながら開発を進めています。

■ 外部システムとの連携(API連携)

外部のシステムなどと連携して、処理の効率化・自動化や機能の拡充などの取り組みも行っています。ここでは、システム連携により実装している機能の例を紹介します。新バージョンでは、PubMedを日本語で検索する機能を実装しました。日本語の検索条件を英語に展開する際は、当会で作成する医学用語シソーラスを使用してMeSH用語を特定しますが、それと並行して外部の自動翻訳システムもリアルタイムで参照して適切に処理します。翻訳システムにはMicrosoft AzureのTranslator Text APIを採用しています。また、生成された検索式は、PubMedが用意するAPI「e-utilities」を使用して、リアルタイムで処理されます。
一方で、医中誌Webでも直接システム連携するためのAPIを用意しています。そのAPIを使用すると、ブラウザで医中誌Webにアクセスすることなく、直接医中誌データの検索と結果取得を行うことが可能となります。業績管理システムや機関リポジトリデータ作成時の書誌情報補完など、幅広いシステムでご利用頂いています。

医中誌Webのこれから

現在、実際に医中誌Webが利用される場面、また目的は以下と考えられます。

利用の場面利用の目的
医療の現場臨床上の課題・疑問の解決のため
論文執筆時先行研究調査のため
製薬企業やCROにおいて医薬品の開発や安全性に関わる調査のため
医学の専門家以外法曹関係者、ジャーナリスト、患者さんやその家族が専門的な医学情報を必要とするとき

上記のそれぞれのニーズ、更に潜在的なニーズを見極めつつ、より良いサービスを提供するため、以下の課題と取組んで行きます。

  • 電子データでの情報入手、自動翻訳の利用、索引支援システムの拡充などによる制作過程の効率化により、タイムラグの短縮を筆頭とする医中誌データベースの基本的な質の向上を図ります。また、医中誌Webに期待される「情報の信頼性の担保」に資する方策を検討・実現します。
  • インターネット下において、医中誌の情報の元となる医学・医療情報の生産の在り方自体が大きく変わりつつあります。学会誌や商業誌の電子化は明らかな変化ですが、それにとどまらず、定期刊行物の発行形態の変化、更には定期刊行物の形を取らない情報発信が進んでいます。医中誌Webユーザーが必要とする情報を取りこぼさないため、それらの変化に柔軟に対応します。
  • 医中誌データベースの要である「医学用語シソーラス」を引き続き安定的に運用管理するとともに、シソーラスAPIの新設などによる更なる有効利用を進めます。
  • 上述の「医中誌Webが利用される場面、また目的」において必要とされるのは医中誌の論文情報とは限りません。そのことを踏まえて実現した医中誌Web新バージョンにおける「日本語によるPubMed検索」「書籍検索(予定)」の提供-即ち医学・医療情報の提供サイトとしての「ポータル化」を適切に進めて行きます。
  • 特に一般の方々による利用を視野に入れ、医中誌Webのユーザーインターフェースを更に改善します。
  • AIの進化により情報入手の手段、検索の在り方が激変しています。その状況への対応として同じく新バージョンにて新設した「ゆるふわ検索」(機械学習型エンジンによる検索)をブラッシュアップし、従来のキーワード検索と補いあう存在に育てて行きます。
  • 2006年に開始し、現在約440万件に達した「電子ジャーナルへのリンク」を更に進めます。また、各種図書館システムへのリンクやデータ送出、認証システムへの対応、更に医中誌WebAPI提供によるフレキシブルな他サービスとの連携など、インターネットの特質を生かしたサービスを強化して行きます。

また、現在、「医中誌Web」サービスとともに以下の取り組みを行っており、今後も継続して行きます。

  • 日本看護協会図書館による看護の実践・研究・教育に関する文献検索サービス「最新看護索引Web」のシステム構築・運用と販売サポートを行っています。
  • JaLC(Japan Link Center)の正会員として「医書.jp」に参加している医書出版社のコンテンツ(雑誌・書籍)のDOI取得と管理を行っています。
  • 東邦大学医学メディアセンターと協同し、「東邦大学・医中誌 診療ガイドライン情報データベース」をオープンアクセスにて公開しています。
  • 国立国会図書館のデジタルコレクションにて医学中央雑誌のバックナンバーを公開しています。2022年末に全文検索が可能となり、医中誌WebのOLD医中誌データとの連携も検討しています。
  • 新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する情報を随時医中誌データベースから抽出し、オープンアクセスにて公開しています。

これらの課題に独立した事業体として取組んでいくためには、安定した経営基盤を築くことはもとより、関連諸機関のご協力が不可欠です。ご利用者の皆様、関連諸機関の皆様におかれましては、引き続きご愛顧、ご協力の程、伏してお願いを申し上げます。


★ 「最新看護索引Web」
 https://www.jamas.or.jp/service/kango/about.html

★ 「医書.jp」
 https://www.isho.jp/

★ 「東邦大学・医中誌 診療ガイドライン情報データベース」
 https://guideline.jamas.or.jp/

★ 医学中央雑誌のバックナンバーを公開
 https://dl.ndl.go.jp/pid/1866385

★ 新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する情報
 https://www.jamas.or.jp/special/covid19/